今日明日の命と思ふ牡丹あり

 百花の女王といわれる牡丹。色や種類によって多少の遅速があるようだが、楽しめる開花シーズンは二週間くらいだそうだ。牡丹守のおじさんの話では一夜の雨であえなく逝ってしまうこともあるという。残る命を惜しむかのように、ややうな ・・・

黙祷の一分間や蝉時雨

 わたしの妻は被爆二世である。帰省ついでに、ときどき平和公園を訪れて鎮魂碑を巡る。 半世紀を経て美しい緑の楽園となった公園には、観光客や修学旅行生たちが屯している。 当時の想像を絶する悲惨さは、原爆ドームや記念館の資料で ・・・

異な草と抜きて吾妹に叱らるる

 夕べのはげしい雨が嘘のように晴れた。目を覚ますと妻は庭の草引きに余念がない。「手伝って!」と促されて渋々庭へ出る。 蒔かず肥料もやらないのにどうして草はこんなに元気がいいのだろう・・・ などと余計なことを考えていると突 ・・・

不即不離心得てをり道をしへ

 人間関係はガラス細工のようにもろい。 ちょっとした誤解や行違いで直ぐに壊れる。特に信頼していた人に裏切られたとき、どうしようもないほど哀しくなる。傷心を慰めようと山道を散策していると斑猫に出会った。近ずくと、「合点!」 ・・・

啓蟄の大地漫画の描かれけり

 昨今は漫画隆盛の時代となった。私達はタンクローやノラクロに夢を馳せた世代である。 今ならさしずめ、ドラエモンやピカチューであろうか。  あたたかい陽射しに誘われて近くの公園まで足を伸ばすとベンチに先客があった。 お孫さ ・・・

大秋晴水平線の撓みけり

 今朝の須磨浦は、波の子もなく洋々とした景を展けている。底抜けに澄んだ青空が広がり一点の穢れもない。 海はまたその色を映して深い深い藍を湛えている。紛れもなく大秋晴。 工業化でスモッグが立ちこめる瀬戸内では、一年を通じて ・・・

妻と吾の灯火親しむ趣味は別

 ようやく朝夕が涼しくなり、日が落ちて爽やかな風が通いはじめるとほっとする。夕食後、テレビの紀行番組を家内と二人で楽しむ。旅行好きな彼女は、いままでに訪ねた場所が紹介されると、いろいろな思い出話をしながら今度は二人で行き ・・・

端居して一雨ほしき夕べかな

 結婚して子供が産まれてそしてマイホームを建てた。高度成長期の勢いで走っていたけれどよく考えてみれば教育費や住宅ローンの返済のために働いているようなもの。 悪戯に忙しい日々を重ねるだけの人生で満足なんだろうか、 黄昏どき ・・・

緑蔭の棋士は王手をさしにけり

 爆心地であった広島の平和公園は緑が生い茂り、市民の憩いのオアシスとなっている。 遊歩道のあちこちに「非核宣言都市」と書かれた白い標が立ち、被災者の冥福を祈念して植樹された一樹一樹も、いまは大樹となってよき緑蔭をつくって ・・・

玻璃窓をノックしてをる冬芽かな

 粗大ゴミにはなりたくないが、家人が掃除を始めるとなにげに居心地が悪くなる。  自宅から車で十分ほどの距離に須磨浦公園がある。家に篭っていたのでは俳句が出来ないと、勇んで吟行に出たものの冷たい海風が容赦なく吹き付け、結局 ・・・

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今日明日の命と思ふ牡丹あり

 百花の女王といわれる牡丹。色や種類によって多少の遅速があるようだが、楽しめる開花シーズンは二週間くらいだそうだ。牡丹守のおじさんの話では一夜の雨であえなく逝ってしまうこともあるという。残る命を惜しむかのように、ややうな ・・・

黙祷の一分間や蝉時雨

 わたしの妻は被爆二世である。帰省ついでに、ときどき平和公園を訪れて鎮魂碑を巡る。 半世紀を経て美しい緑の楽園となった公園には、観光客や修学旅行生たちが屯している。 当時の想像を絶する悲惨さは、原爆ドームや記念館の資料で ・・・

異な草と抜きて吾妹に叱らるる

 夕べのはげしい雨が嘘のように晴れた。目を覚ますと妻は庭の草引きに余念がない。「手伝って!」と促されて渋々庭へ出る。 蒔かず肥料もやらないのにどうして草はこんなに元気がいいのだろう・・・ などと余計なことを考えていると突 ・・・

不即不離心得てをり道をしへ

 人間関係はガラス細工のようにもろい。 ちょっとした誤解や行違いで直ぐに壊れる。特に信頼していた人に裏切られたとき、どうしようもないほど哀しくなる。傷心を慰めようと山道を散策していると斑猫に出会った。近ずくと、「合点!」 ・・・

啓蟄の大地漫画の描かれけり

 昨今は漫画隆盛の時代となった。私達はタンクローやノラクロに夢を馳せた世代である。 今ならさしずめ、ドラエモンやピカチューであろうか。  あたたかい陽射しに誘われて近くの公園まで足を伸ばすとベンチに先客があった。 お孫さ ・・・

大秋晴水平線の撓みけり

 今朝の須磨浦は、波の子もなく洋々とした景を展けている。底抜けに澄んだ青空が広がり一点の穢れもない。 海はまたその色を映して深い深い藍を湛えている。紛れもなく大秋晴。 工業化でスモッグが立ちこめる瀬戸内では、一年を通じて ・・・

妻と吾の灯火親しむ趣味は別

 ようやく朝夕が涼しくなり、日が落ちて爽やかな風が通いはじめるとほっとする。夕食後、テレビの紀行番組を家内と二人で楽しむ。旅行好きな彼女は、いままでに訪ねた場所が紹介されると、いろいろな思い出話をしながら今度は二人で行き ・・・

端居して一雨ほしき夕べかな

 結婚して子供が産まれてそしてマイホームを建てた。高度成長期の勢いで走っていたけれどよく考えてみれば教育費や住宅ローンの返済のために働いているようなもの。 悪戯に忙しい日々を重ねるだけの人生で満足なんだろうか、 黄昏どき ・・・

緑蔭の棋士は王手をさしにけり

 爆心地であった広島の平和公園は緑が生い茂り、市民の憩いのオアシスとなっている。 遊歩道のあちこちに「非核宣言都市」と書かれた白い標が立ち、被災者の冥福を祈念して植樹された一樹一樹も、いまは大樹となってよき緑蔭をつくって ・・・

玻璃窓をノックしてをる冬芽かな

 粗大ゴミにはなりたくないが、家人が掃除を始めるとなにげに居心地が悪くなる。  自宅から車で十分ほどの距離に須磨浦公園がある。家に篭っていたのでは俳句が出来ないと、勇んで吟行に出たものの冷たい海風が容赦なく吹き付け、結局 ・・・